第3部 制度と税金
iDeCo
掛金が全額所得控除になる仕組みと、2026年12月施行の合算ルール。
iDeCoは自分で作る年金です。NISAと同じく器ですが、 効きどころが違います。NISAが出口(運用益)で効くのに対して、iDeCoは入口(掛金)で効きます。 そのかわり、60歳まで引き出せません。
制度の数字は改正で変わります。この章は2026年9月時点の内容です。 実際に使う前に、iDeCo公式サイト(末尾の参考文献)で最新の数字を確かめてください。2026年12月に拠出限度額の算定方法が変わります(後述)。
税制優遇が3か所にある
入口の効き方——所得控除
掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除になります。 課税所得が減るので、所得税と住民税が軽くなります。
自分の場合いくらになるかは、 当サイトのiDeCo 拠出限度額・節税額 計算機で試せます。
ここがNISAとの決定的な違いです。NISAには掛金の控除がありません。 運用がうまくいかなくても、iDeCoは掛けた時点で税が軽くなります。
2026年12月からの改正——「引き上げ」ではない
よく「上限が6.2万円に引き上げ」と説明されますが、正確には合算ルールへの切り替えです。 会社員の場合、こうなります。
企業年金がない人は62,000円まで出せますが、企業型DCや確定給付企業年金がある人は、その分だけ枠が減ります。 6.2万円を固定の上限として計算すると、企業年金がある人に過大な額が出ます。
新しい額が実際に効くのは2026年12月拠出分からで、 引落しは2027年1月からです。 いま出せる額と、改正後に出せる額は別なので、混同しないでください。
60歳まで引き出せない
iDeCoの最大の制約です。原則として途中でやめて現金化できません。 掛金の停止(運用指図者になる)はできますが、引き出しはできません。
- 欠点として:失業・病気・住宅購入など、 お金が必要になっても使えません。 だから第1部1章の「使うお金」「備えるお金」を分けたあとの、 さらに余裕がある分でしか掛けられません
- 利点として:相場が下がったときに慌てて売る、 ということが構造的に起きません。 長期投資でいちばん多い失敗を、制度が防いでくれる面があります
受給開始年齢は加入期間で決まります。通算加入者等期間が10年に満たない場合、 60歳では受け取れず、期間に応じて開始が後ろにずれます。 50代で始める場合はここを確認する必要があります。
出口——ここが見落とされやすい
受取時は非課税ではありません。NISAと違い、受け取る段階で課税対象になります。 ただし大きな控除が使えるので、結果として税がかからないことも多い、という関係です。
| 受け取り方 | 扱い | 注意 |
|---|---|---|
| 一時金(一括) | 退職所得 | 会社の退職金と合算される。 退職所得控除の枠を分け合う形になる |
| 年金(分割) | 雑所得 | 公的年金等控除の対象。公的年金と合算される |
| 併用 | 両方 | 金融機関によって選べる形が違う |
会社の退職金が多い人は、出口で課税されることがあります。退職所得控除は勤続年数などで決まる枠で、 iDeCoの一時金と会社の退職金が同じ枠を使います。入口で軽くなった分を、出口で払い戻す形になる場合があるということです。 受け取る年をずらすと扱いが変わることもあるので、 受け取りが近づいたら必ず個別に確認してください。
手数料がかかる
NISAと違い、iDeCoには口座を持つだけで手数料がかかります。
- 加入時に一度かかる手数料
- 掛金を出すたびにかかる手数料(国民年金基金連合会・信託銀行)
- 運営管理機関(金融機関)の手数料——ここは金融機関によって差があります
少額の掛金だと、手数料の比率が無視できなくなります。 掛金を止めて運用指図者になっても、口座管理手数料はかかり続けます。
NISAとの使い分け
- 老後まで動かさないと決められるお金——iDeCoの入口の控除が効きます
- 使う時期が決まっていないお金——NISAのほうが素直です
- 所得税を払っていない人(専業主婦・低所得)—— 入口の控除が効かないので、iDeCoの利点が1つ減ります。 手数料を考えるとNISAが先になることが多い
まとめ
- iDeCoは入口(掛金の全額所得控除)で効く。NISAにはこれがない
- 控除の効果は所得税率が高い人ほど大きい
- 2026年12月の改正は「引き上げ」ではなく合算ルールへの切り替え
- 60歳まで引き出せない。欠点でもあり、狼狽売りを防ぐ利点でもある
- 受取時は非課税ではなく控除の対象。退職金と枠を分け合う
- 口座を持つだけで手数料がかかる。少額だと比率が効く
参考文献
この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。
- 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
- 官公庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
- 業界団体・取引所iDeCo(個人型確定拠出年金)の概要国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト確認日 2026-09-07