第3部 制度と税金
特定口座・一般口座
源泉徴収ありとなしで何が変わるか。確定申告が要る場合・したほうがいい場合。
証券口座を開くときに必ず聞かれるのが口座の種類です。選択によって、確定申告が要るかどうかが変わります。 あとから変えられる部分もありますが、年単位の制約があるので、 最初に意味を知っておくほうが楽です。
制度は改正で変わります。この章は2026年9月時点の内容です。実際の申告の前に、 国税庁のタックスアンサー(末尾の参考文献)で最新の内容を確かめてください。
3つの選択肢
| 特定口座(源泉徴収あり) | 特定口座(源泉徴収なし) | 一般口座 | |
|---|---|---|---|
| 損益の計算 | 証券会社がやる | 証券会社がやる | 自分でやる |
| 年間取引報告書 | もらえる | もらえる | もらえない |
| 納税 | 売るたびに天引き | 自分で申告 | 自分で申告 |
| 確定申告 | 原則不要 | 必要 | 必要 |
迷ったら「特定口座(源泉徴収あり)」で始めるのが無難です。手間がいちばん少なく、確定申告が要りません。 あとから申告することも選べます(後述)。
源泉徴収ありの仕組み
同じ口座の中では、自動で損益が通算されます。1月に利益が出て天引きされ、11月に損が出た場合、 年末までに払いすぎた分が口座に戻ります。 自分で申告しなくても、口座内で完結します。
それでも確定申告したほうがよい場合
源泉徴収ありでも、申告すると得になる場面があります。 申告するかどうかは自分で選べます。
- 損失を翌年以降に繰り越したいとき。その年の損を使い切れなかった場合、 申告すれば3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できます。申告しないと繰り越せません(第3部21章)
- 複数の証券会社の損益を通算したいとき。A社で利益、B社で損失という場合、 源泉徴収ありのままだとA社の税は取られっぱなしです。 申告すれば通算できます
- 配当を配当控除で申告したほうが有利なとき。所得が低い場合、総合課税を選ぶと税率が下がることがあります
申告することで別の負担が増えることがあります。申告すると合計所得金額が増えるため、 国民健康保険料や、配偶者控除・扶養の判定、 各種給付の所得制限に影響することがあります。税だけが安くなっても、保険料で逆転する場合があります。判断が難しいところなので、金額が大きいときは税理士や税務署に確認してください。
源泉徴収なしを選ぶ場合
給与所得者で、年間の利益が20万円以下の場合、 所得税の確定申告が不要になる仕組みがあります。 源泉徴収なしを選べば、その範囲では所得税が引かれません。
ただし注意点が2つあります。
- これは所得税の話で、住民税は別です。20万円以下でも住民税の申告は必要です
- 他に確定申告をする場合は使えません。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)で 申告するなら、株の利益も申告に含める必要があります
一般口座が必要になる場合
いまは特定口座が使えるので、あえて選ぶ理由はほとんどありません。 ただし特定口座に入れられない商品があり、 その場合は一般口座になります。 取得価額を自分で管理し、損益を自分で計算する必要があります。
NISA口座との関係
NISA口座は、特定口座・一般口座とは別枠です。
- NISA口座の利益は非課税なので、そもそも源泉徴収されません
- NISA口座の損失は、特定口座の利益と通算できません(第3部18章)。 税務上「無かったこと」になります
- 同じ証券会社で、NISA口座と特定口座を並行して持てます
まとめ
- 迷ったら特定口座(源泉徴収あり)。確定申告が要らない
- 源泉徴収ありでも、同じ口座内では年間の損益が自動で通算される
- 損を繰り越すには申告が必要。しないと繰り越せない
- 複数の証券会社をまたぐ通算にも申告が要る
- 申告すると保険料や扶養判定に影響することがある。税だけで判断しない
- NISA口座は別枠。その損失は特定口座の利益と通算できない
参考文献
この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。
- 官公庁No.1476 特定口座制度国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
- 官公庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
- 官公庁No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07