第1部 基礎(原理)

リスクとリターン

投資の「リスク」は損失ではなく振れ幅。標準偏差で測るとはどういうことか。

投資の話で「リスク」という言葉が出てきたとき、 日常語の「危険」で読むと必ず混乱します。投資でいうリスクは、損失のことではなく振れ幅のことです。 ここを取り違えると、以降の章の言葉がすべてずれます。

リスク=振れ幅

リスクは、リターンがどれくらいばらつくかを表します。 上にも下にも振れることを指すので、大きく儲かる可能性もリスクの一部です。 数値としては標準偏差で測ります。

同じ「期待リターン5%」でも中身が違うAは毎年きっちり5%増える。Bは +25% の年と −15% の年が半々。 平均するとどちらも5%ですが、持っている間の経験がまったく違います。 Bのほうがリスクが大きい、というのがこの言葉の使い方です。
そしてBには、取り崩したい年がたまたま −15% の年だったという問題がついて回ります。

「リスクが高い=リターンも高い」ではありません。正しくは「高いリターンを期待するなら、高いリスクを引き受けるしかない」です。 逆は成り立ちません。リスクだけ高くてリターンが低いものは、いくらでもあります。リスクを取れば報われる、という読み替えが、いちばん損につながります。

どれだけ減りうるかは、比率で決まる

自分がどれだけのリスクを取っているかは、値動きする資産を全体の何割持っているかでおおよそ決まります。 持っている商品の名前より、この比率のほうがはるかに効きます。

同じ「3割下落」でも、持っている比率で痛みがまったく違います。商品を選ぶ前に、この比率を決めるのが順番です。

3割の下落は、株式市場では珍しいことではありません。「何%減っても、売らずに待てるか」—— これがリスク許容度の実際の中身です。 年齢や性格ではなく、金額で考えるほうが当てになります。

リスク許容度は何で決まるか

  • いつ使うお金か。いちばん効きます。 30年後に使うお金なら、途中の下落は待てます。3年後に使うお金は待てません
  • 減っても生活が壊れないか。前章の「増やすお金」に収まっているか
  • 減ったときに判断を誤らないか。これは事前には分かりません。分からない前提で、比率を控えめにしておくのが安全側です

下落に耐えられるかは、下落してみるまで本当には分かりません。だから最初は「これくらいなら平気」と思う比率より少なめから始めて、 一度下げ相場を経験してから増やすほうが、順序として安全です。

減った分を取り戻すには、より大きく上げる必要がある

直感に反する算数がひとつあります。50%下がったものが元に戻るには、100%上がる必要があります。

下落率元に戻すのに必要な上昇率
10%+11.1%
20%+25%
30%+42.9%
50%+100%
70%+233.3%

下落が深くなるほど、回復に必要な上昇は急に大きくなります。大きく減らさないことが、大きく増やすことと同じくらい効くのはこのためです。 リスクを抑える話が、ただの臆病ではないのはここに理由があります。

まとめ

  • 投資のリスクは損失ではなく振れ幅。上振れもリスクのうち
  • 「リスクが高ければリターンも高い」は逆向きには成り立たない
  • どれだけ減りうるかは、値動きする資産の比率でほぼ決まる
  • リスク許容度は「いつ使うお金か」がいちばん効く
  • 50%の下落を取り戻すには100%の上昇が要る。減らさないことの価値は大きい

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁基礎から学べる金融ガイド金融庁確認日 2026-09-07
  3. 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07

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