第1部 基礎(原理)

複利と時間

複利がなぜ「時間を味方につける」と言われるのか、72の法則と、コストが複利で効く逆側まで。

複利は「利息にも利息がつく」ことです。説明としてはこれで終わりなのですが、 効き方が直感から外れているので、多くの人が桁を見誤ります。 この章では、その外れ方を図と数字で確かめます。

単利と複利で、何がどれだけ違うのか

単利は元本にだけ利息がつきます。複利は、ついた利息を元本に組み入れて、 次の年はその合計に利息がつきます。 年利3%で100万円を置いた場合、1年目はどちらも3万円で同じです。差が出るのは先です。

複利の線が「反り返っている」ことが要点です。単利はまっすぐなので、差は年々広がっていきます。
元本100万円・年利3%(税・手数料は考えない)
経過年数単利複利
1103.0万円103.0万円0.0万円
10130.0万円134.4万円4.4万円
20160.0万円180.6万円20.6万円
30190.0万円242.7万円52.7万円
40220.0万円326.2万円106.2万円

注目すべきは、差そのものが加速していることです。 10年目まででついた差は4.4万円ですが、 30年目から40年目までの10年間だけで 53.5万円ぶん開きます。 同じ「10年」でも、後ろの10年のほうがはるかに重い。 これが「時間を味方につける」と言われることの中身です。

72の法則

元本が2倍になるまでの年数は、72 ÷ 年利(%)でおおよそ求まります。 年利3%なら72 ÷ 3 = 24年、年利6%なら12年です。 暗算で桁感をつかむための近似で、年利が数%〜10%程度の範囲でよく合います。

72の法則と、正確に計算した2倍までの年数
年利72の法則正確な年数ずれ
3%2423.40.6
5%14.414.20.2
6%1211.90.1
10%7.27.3-0.1
使いどころ年利4.8%なら72 ÷ 4.8 = 15年で2倍。30年ならそれが2回起きるので約4倍です (正確に計算すると4.08倍)。 「30年で4倍にしたい」という目標が、年利4.8%を30年続けるという意味だと分かれば、 それが現実的かどうかを第2部の各資産の性質と突き合わせて判断できます。

複利は逆にも効く(コストと税)

ここがこの章の要点です。複利は増えるほうにだけ働くものではありません。 毎年差し引かれるコストも、同じ仕組みで複利的に効きます。

投資信託の信託報酬は、 保有している間ずっと純資産から日割りで差し引かれます。 リターンが年5%でも信託報酬が年1.5%なら、手元に残るのは実質3.5%です。 この1.4ポイントの差が、30年でどうなるかを見ます。

3本とも「同じ投資対象」です。分かれていくのは信託報酬の差だけ。年1.4ポイントの違いが、30年で元本と同じ規模の差になります。
元本100万円・投資対象そのもののリターンは年5%で共通。差は信託報酬だけ
信託報酬実質利回り20年後30年後
0.1%4.9%260.3万円420.0万円
0.5%4.5%241.2万円374.5万円
1.5%3.5%199.0万円280.7万円

年0.1%と年1.5%の差は、1年で見れば1.4ポイントにすぎません。 それが30年後には139.3万円の差になります。元本と同じ規模です。

リターンは不確実ですが、コストは確実です。年5%になるかどうかは誰にも分かりませんが、信託報酬1.5%は 運用がうまくいってもいかなくても必ず引かれます。 だからコストは、投資判断のなかで数少ない「事前に確実に分かる変数」になります。 この観点は第1部5章「コスト」で詳しく扱います。

積み立てた場合はどうなるか

一括ではなく毎月一定額を積み立てる場合、後から入れたお金ほど 複利が効く期間が短くなります。同じ総額でも、早く入れたお金のほうが働きます。

棒の左の淡い部分が自分で入れたお金、右の濃い部分が運用益です。年数が延びるほど、右側の比率が上がっていきます。
毎月3万円を年利5%で積み立てた場合(税・手数料は考えない)
期間積み立てた元本評価額うち運用益
10360.0万円465.8万円105.8万円
20720.0万円1,233.1万円513.1万円
301,080.0万円2,496.8万円1,416.8万円

30年続けると、評価額のうち元本は43%で、残りは運用益です。20年では運用益は42%、10年では23%。後半になるほど運用益の比率が上がるのが複利の形です。

この章で注意しておくこと

  • ここに出した数字は「年利が一定だったら」という仮定の計算です。現実の株式や投資信託の価格は毎年上下し、一定の利回りで増えることはありません。 上の図の線がなめらかなのは計算の都合で、実際の値動きはぎざぎざです。 複利の効き方を理解するための道具として見てください
  • 過去の平均リターンは将来を約束しません。年5%という数字も、そうなると決まっているものではありません
  • 税を考えていません。課税口座では利益に約20%かかるため、 そのぶん複利の効きは落ちます。だから制度(NISA・iDeCo)で 器を選ぶ話が第3部に出てきます

まとめ

  • 複利は、差そのものが年々加速する。後ろの10年ほど重い
  • 2倍になる年数は「72 ÷ 年利(%)」でおおよそ分かる
  • コストも同じ仕組みで複利的に効く。信託報酬0.1%と1.5%の差は、 30年で元本と同じ規模になる
  • リターンは不確実だが、コストは確実に引かれる

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁基礎から学べる金融ガイド金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  3. 書籍ジョン・C・ボーグルインデックス投資は勝者のゲーム(原題: The Little Book of Common Sense Investing)パンローリング確認日 2026-09-07

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