第4部 実践

リスク管理と損切り

1回の取引でいくらまで失ってよいかから、持つ量を決める(ポジションサイジング)。

投資で退場する原因は、読みが外れることではありません。1回の失敗で立て直せない額を失うことです。 読みは外れて当たり前なので、外れたときにいくら失うかを先に決めておくのがこの章です。

順番を逆にしない

多くの人は「いくら買うか」から入ります。そこから始めると、損切りの位置が「いくら失うか」を勝手に決めてしまいます。
計算のしかた資産1,000万円、1回の取引で失ってよいのは1%=10万円と決めたとします。
10%下がったところで損切りするなら、持てる量は
10万円 ÷ 0.10 =100万円分
損切りを浅く(5%)すれば多く持てますが、浅い損切りは、通常の値動きで引っかかりやすくなります
損切りを深くするほど、持てる量は小さくなります。どちらが良いという話ではなく、この2つは連動しているという関係です。

なぜ1回あたりを小さくするのか

第1部2章で見た算数がここで効きます。大きく減らすほど、取り戻すのに必要な上昇が急に大きくなります。

連敗数1回2%ずつ失う1回10%ずつ失う
5連敗残り90.4%残り59%
10連敗残り81.7%残り34.9%
20連敗残り66.8%残り12.2%

連敗は必ず起きます。1回あたりを小さく保っていれば、連敗しても資産はほとんど残ります。 大きく張っていると、同じ連敗で市場から退場します。読みの精度ではなく、この設計が生死を分けます。

損切りが難しい理由

損切りは、決めることより実行することのほうが難しい。含み損を確定させると「自分が間違っていた」ことが確定するため、 先送りしたくなります。 「まだ下がっただけで、売らなければ損ではない」という考え方は、いま同じ値段でこれを買うかと問い直すと崩れます。 買わないなら、持ち続ける理由も同じだけありません。

  • 逆指値を入れておく(第4部24章)。 発動を自分の意思から切り離せます
  • 入る前に書き留める。どこで切るかを、買う前に決めて記録します。 持ってから考えると、必ず甘くなります
  • 損切りをずらさない。第4部29章で挙げたとおり、これが破綻の最短経路です

長期の積立にも当てはまること

ここまで短期売買を前提に書きましたが、長期投資でも中身は同じです。 違うのは「損切り」ではなく「配分」で管理する点だけです。

  • 1回の下落で失ってよい額を決め、 そこから値動きする資産の比率を逆算する(第4部27章)
  • 個別株に集中しない。1社の失敗が全体に効かないようにする(第1部4章)
  • レバレッジをかけない。耐える時間を確保するのが長期投資の前提なので、 期限や強制決済のある仕組みは相性が悪い(第4部31章)

やってはいけないこと

  • 損失を取り返そうとして量を増やす。リスク管理の設計が壊れます
  • 下がったから買い増す(ナンピン)を無計画にやる。あらかじめ計画された分割購入と、 損を認めたくない買い増しは別物です
  • 1つの銘柄・1つの資産に集中する。読みが当たっている間は最も効率的で、外れた1回で終わります

まとめ

  • 退場の原因は読み違いではなく、1回で立て直せない額を失うこと
  • 順番は「失ってよい額 → 損切りの位置 → 持てる量」。逆にしない
  • 損切りを浅くすれば多く持てるが、通常の値動きで引っかかる
  • 1回あたりを小さく保てば、連敗しても資産は残る
  • 損切りは逆指値で自分の意思から切り離す
  • 長期投資では「損切り」ではなく「配分」で同じことをする

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  2. 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07
  3. 論文Barber, B. M. and Odean, T.(2000) Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors, The Journal of Finance, 55(2), 773-806The Journal of Finance確認日 2026-09-07

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