第2部 資産クラス別
株式
株式のリターンはどこから来るのか。値上がり益と配当、株主の権利、そして価格が動く理由。
株式は、会社の所有権を細かく分けたものです。 1株持つということは、その会社のごく一部を所有しているということで、 値動きを追うゲームの参加権を買ったわけではありません。 この章では、株式のリターンがどこから来るのかを先に押さえます。
株主が持っている3つの権利
| 権利 | 中身 |
|---|---|
| 剰余金配当請求権 | 利益の分配(配当)を受け取る権利 |
| 議決権 | 株主総会で経営方針に投票する権利 |
| 残余財産分配請求権 | 会社が解散したとき、債権者への支払いがすべて済んだあとに残った財産を受け取る権利 |
3つ目は順番が大事です。株主は債権者より後ろに並びます。会社が倒産した場合、借入金や社債の返済が先で、 残りがなければ株主の取り分はゼロになります。 同じ会社にお金を出していても、社債(債権者)と株式(株主)でリスクの位置が違うのはこのためです。
株式の損失は、投資した額が上限です。会社が倒産して株式の価値がゼロになっても、 株主が会社の借金を肩代わりすることはありません(株主有限責任)。 ただしこれは信用取引には当てはまりません(第4部31章)。借りて買っている場合、損失は入金額を超えます。
リターンはどこから来るのか
株式から得られるものは2つに分けられます。
- インカムゲイン——配当。会社が稼いだ利益の一部を株主に分配するもの
- キャピタルゲイン——値上がり益。買った値段より高く売れたときの差額
長期で見ると、株価は最終的にその会社が生み出す利益についていきます。 利益が増えれば配当も増やせるし、企業価値も上がるからです。 ただし短期の株価は、利益ではなく「利益の予想」と「他の参加者の予想」で動きます。決算が良かったのに株価が下がることがあるのは、 すでにそれ以上の良い数字が織り込まれていたからです。
配当の実務
配当を受け取るには、権利確定日に株主名簿に載っている必要があります。 名簿に載るには受け渡しが完了している必要があり、 日本の株式の受け渡しは約定日から2営業日後(T+2)です。 したがって権利確定日の2営業日前——権利付最終日——までに買う必要があります。
配当利回りの高さだけで選ぶのは危険です。配当利回りは「1株あたり年間配当 ÷ 株価」なので、株価が下がっただけでも利回りは上がります。 業績が悪化して株価が半分になれば、利回りは見かけ上2倍になる。 そして業績が悪ければ、次の期に配当そのものが減らされる(減配)ことがあります。
売買の単位と値段の刻み
- 国内株式の売買単位は100株に統一されています。 株価1,500円の銘柄なら最低15万円が必要です
- 呼値の単位——注文できる値段の刻みは、 価格帯によって決まっています。株価3,000円以下なら1円刻み、 といった形で、価格が高くなるほど刻みも粗くなります
- 単元未満株(1株から買える仕組み)を扱う証券会社もありますが、 注文方法や約定のタイミングに制限があります
税金
譲渡益にも配当にも、合計20.315%がかかります (所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)。 課税口座で10万円の利益が出たら、手元に残るのは約79,685円です。
この税を非課税にできるのがNISAで、詳しくは第3部18章で扱います。 口座の種類による違い(特定口座の源泉徴収あり・なし)は20章です。
個別株を選ぶということ
ここまでが仕組みの話です。実際に「どの会社の株を買うか」については、 この教科書では特定の銘柄を挙げません(免責のとおりです)。 代わりに、判断の枠組みだけ置いておきます。
- 個別株は1社に集中するので、その会社固有の事情 (不祥事・主力製品の失敗・経営者の交代)が直撃します。 これは分散によって減らせるリスクで、第1部4章で扱います
- 市場全体を買う手段(インデックスの投資信託・ETF)と比べて、 個別株を選ぶことが報われるかどうかには長い議論があります。第1部6章で扱います
- 「みんなが知っている良い会社」と「良い投資先」は別です。 誰もが良いと知っている情報は、すでに株価に反映されています
まとめ
- 株式は会社の所有権。株主は倒産時、債権者より後ろに並ぶ
- 損失の上限は投資額(ただし信用取引は別)
- リターンは配当と値上がり益。長期では利益に、短期では予想に連動する
- 配当が欲しいなら権利付最終日(権利確定日の2営業日前)までに買う
- 配当利回りは株価下落でも上がる。高利回りは警告のこともある
- 譲渡益・配当ともに20.315%が課税される
参考文献
この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。
- 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
- 官公庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
- 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07
- 業界団体・取引所東証マーケット情報・株式売買制度株式会社日本取引所グループ(JPX)確認日 2026-09-07
- 書籍ウォール街のランダム・ウォーカー(原題: A Random Walk Down Wall Street)日本経済新聞出版確認日 2026-09-07