第2部 資産クラス別

金・コモディティ

利息を生まない資産をなぜ持つのか。インフレヘッジという言葉の中身。

金や原油などのコモディティ(商品)は、 これまでの章で見た資産と決定的に違う点があります。持っていても何も生まないということです。 ここを押さえないと、値上がり益への期待だけで判断することになります。

リターンの源泉がない

上の3つは持っているだけで何かが入ってきます。金にはそれがありません。この差が、評価のしかたを変えます。

株式なら「利益の何倍か」で高い安いを議論できます。債券なら利回りがあります。金にはこの基準がありません。値段を決めるのは需要と供給、つまり 「他の人がいくらで買うか」だけです。

これは「金がだめだ」という意味ではありません。性質が違うということです。生み出さない代わりに、 企業の業績とも金利とも直接つながっていないので、他の資産と違う動きをすることがあります。 分散の材料として組み入れられるのはこの性質のためです。

「インフレに強い」という言葉の中身

金がよく「インフレヘッジ」と言われるのは、実物なので、通貨の価値が下がっても実物としての価値は残るという考え方からです。紙幣は刷れますが、金は増やせません。

ただし短期的にはインフレ率と金価格が連動しないことはよくあります。 金の価格は実質金利・為替・地政学的な状況など複数の要因で動くので、 「物価が上がったから金も上がる」という単純な関係にはなりません。長い目で見た購買力の保存という文脈の話だと理解しておくのが正確です。

日本で金を持つと、為替が乗る

金の国際価格はドル建てです。円で買うと、金価格と為替の両方が効きます。

ドル建て金価格為替円建てでは
上がる円安大きく上がる
上がる円高打ち消し合う
下がる円安打ち消し合う
下がる円高大きく下がる

「金は上がっているのに、自分の資産は増えていない」ということが起きます。見ている価格がドル建てなのか円建てなのかを、必ず確かめてください。

持ち方によって別物になる

持ち方特徴注意
現物(地金・コイン)実物を持つ保管の手間と費用。売買のスプレッドが大きい
純金積立毎月一定額を積む手数料と保管料がかかる
金ETF・投資信託証券口座で売買できる信託報酬。現物と交換できないものが多い
金鉱株金を採掘する会社の株式金そのものではない。会社の経営リスクが乗る

税金の扱いが持ち方で変わります。現物の金を売った利益は原則として譲渡所得(総合課税)で、 保有期間5年超なら長期譲渡所得として扱いが変わります。 一方、金ETFや投資信託は申告分離課税20.315%です。 同じ「金に投資した」でも税率が違うので、 実際に売る前に国税庁の情報で確かめてください。

コモディティ全般について

原油・穀物などのコモディティに投資する商品の多くは、 現物ではなく先物を使っています(第2部17章)。 先物には期限があるため、期限が来るたびに次の限月へ乗り換える必要があり、この乗り換えでコストが発生することがあります

その結果、原油価格が上がっているのに、 原油に連動するはずの商品の価格が上がらないということが起こりえます。 コモディティの商品を買うときは、 何に連動する設計なのかを目論見書で確かめる必要があります。

まとめ

  • 金・コモディティは利息も配当も生まない。値上がりでしか儲からない
  • だから「高い・安い」を判断する基準が、他の資産のようには存在しない
  • 他の資産と違う動きをすることがあり、分散の材料になる
  • 円で持つと為替が乗る。ドル建て価格と円建て価格は別物
  • 持ち方(現物・ETF・鉱山株)で性質も税金も変わる
  • 先物を使う商品は、乗り換えのコストで指数どおりに動かないことがある

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁消費者物価指数(CPI)総務省統計局確認日 2026-09-07
  3. 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07

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