第2部 資産クラス別
ETF
上場している投資信託。投資信託との違いと、基準価額からの乖離。
ETF(上場投資信託)は、取引所に上場している投資信託です。 中身は前章の投資信託と同じ「箱」ですが、 売買のしかたが株式と同じになることで、性質がいくつか変わります。
投資信託との違い
| 投資信託 | ETF | |
|---|---|---|
| 値段 | 基準価額(1日1回) | 市場価格(取引時間中つねに動く) |
| 買い方 | 金額指定ができる(1万円分など) | 口数で買う。株式と同じ |
| 注文 | いくらで買えるか分からない(ブラインド方式) | 成行・指値が使える(第4部24章) |
| コスト | 信託報酬 | 信託報酬+売買手数料+スプレッド |
| 分配金 | 自動で再投資する商品がある | 自動再投資できない(現金で受け取り、自分で買い直す) |
積立にはETFより投資信託が向いていることが多いです。毎月3万円と決めても、ETFは口数で買うので端数が出ますし、 分配金が出るたびに自分で買い直す必要があります。 逆に、まとまった額を自分のタイミングで買うならETFの機動性が生きます。どちらが優れているかではなく、買い方に合うかどうかです。
乖離——市場価格と基準価額のずれ
ETFにも中身の資産から計算される基準価額があります。 ところが市場価格は売りたい人と買いたい人の需給で決まるので、 両者はぴったり一致しません。このずれを乖離といいます。
なぜ乖離は小さく保たれるのか市場価格が基準価額より高くなりすぎると、 指定参加者と呼ばれる業者が「中身を買ってETFを作り、市場で売る」ことで儲かります。 安くなりすぎれば逆をします。この裁定取引が働くので、通常は乖離が小さく収まります。
逆に言えば、裁定が働きにくい状況では乖離が広がります。
逆に言えば、裁定が働きにくい状況では乖離が広がります。
- 市場が急変しているとき——裁定が追いつかない
- 取引が少ないETF——そもそも売買が成立しにくい
- 海外資産のETFで、現地市場が閉まっているとき—— 中身の値段が動かないのに、日本の取引時間中に市場価格だけが動く
取引が少ないETFは、板が薄いという形でも効いてきます。買値と売値の差(スプレッド)が広がり、 成行注文を出すと思ったより不利な値段で約定します (第4部24章の「成行が滑る」話がそのまま当てはまります)。
国内ETFと海外ETF
| 国内ETF | 海外ETF | |
|---|---|---|
| 取引時間 | 東証の取引時間 | 現地市場の時間(日本の夜間が多い) |
| 通貨 | 円 | 外貨。為替手数料がかかる |
| 分配金の課税 | 20.315% | 現地でも課税されることがある(二重課税) |
海外ETFの分配金は、現地で源泉徴収されたうえで日本でも課税されることがあります。 確定申告で外国税額控除を使えば一部を取り戻せますが、 手間がかかります(第3部21章)。
分配金の再投資
第1部3章で見たとおり、複利は「増えた分がさらに働く」ことで効きます。受け取った分配金が現金のまま置かれている期間は、その分が働いていません。長期の積立なら、この手間の差は無視できない大きさになりえます。
まとめ
- ETFは上場した投資信託。売買は株式と同じ(成行・指値が使える)
- 市場価格と基準価額はずれる(乖離)。裁定が働きにくい場面で広がる
- 取引が少ないETFはスプレッドが広く、成行で不利になりやすい
- 分配金は自動再投資できない。買い直すまで運用に回らない
- 海外ETFは為替手数料と、現地・日本の二重課税に注意
- 積立なら投資信託、まとまった額を自分の判断で買うならETFが向きやすい
参考文献
この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。
- 業界団体・取引所東証マーケット情報・株式売買制度株式会社日本取引所グループ(JPX)確認日 2026-09-07
- 業界団体・取引所投資信託を学ぼう一般社団法人 投資信託協会確認日 2026-09-07
- 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07