第3部 制度と税金

暗号資産の税金

雑所得・総合課税で、株式とはまったく違う扱いになる。20%分離課税への改正と、まだ適用が始まっていないこと。

暗号資産の税は、株式とはまったく別の仕組みです。 章を分けているのは、株式の感覚で処理すると 申告漏れや想定外の納税額につながるからです。 金額が大きくなってから気づくと手遅れになります。

制度は改正で変わります。この章は2026年9月時点の内容です。 暗号資産の税制は見直しの議論が続いている領域なので、 実際の申告の前に国税庁の情報(末尾の参考文献)を必ず確かめてください。

株式との違い

上場株式暗号資産(個人・原則)
所得区分譲渡所得雑所得
課税方式申告分離課税総合課税
税率20.315%で固定他の所得と合算して累進
損益通算株式等の中で可能給与や株式とはできない
繰越控除3年間できない
NISA使える使えない
源泉徴収特定口座なら自動ない。自分で計算して申告する

総合課税だと何が起きるか

総合課税は、給与など他の所得と合算した金額に累進税率をかける方式です。所得税は課税所得が大きいほど税率が上がり、住民税10%と合わせると最大で約55%になります。

同じ利益でも税額が変わる暗号資産で300万円の利益が出たとします。
株式なら、他の所得がいくらであっても20.315%です。
暗号資産では、給与所得が高い人ほど税率が上がります。 同じ300万円の利益でも、人によって納税額がまったく違います。
自分の税率は、課税所得(給与所得控除や各種控除を引いたあと)で決まります。

売っていなくても課税されることがある

ここがいちばん見落とされます。円に戻していなくても、損益が実現したものとして扱われる場面があります。

「円に戻していないから関係ない」は誤りです。交換や決済のたびに損益を計算する必要があります。
  • 暗号資産どうしの交換。ビットコインを別の暗号資産に交換した時点で、 ビットコインを売って買い直したものとして損益が出ます
  • 暗号資産での決済。商品やサービスの支払いに使った場合も同じです
  • マイニング・ステーキング等での取得。取得した時点の時価が所得になります

取引のたびに記録を残してください。交換を繰り返していると、あとから取得価額を再現するのが極めて困難になります。 取引所が廃業していたり、履歴のダウンロード期限が過ぎていたりすると、正確な計算ができなくなります。 日付・数量・時価・手数料を、その都度残しておくのが唯一の対策です。

取得価額の計算方法

同じ暗号資産を複数回に分けて買った場合、 売ったときの原価をどう計算するかを決める必要があります。

  • 総平均法——年間の取得総額を総数量で割る。 届出をしない場合、個人はこちらが法定の方法です
  • 移動平均法——取得のたびに平均単価を計算し直す。 選ぶには届出が必要です

いったん選んだ方法は継続して使います。年ごとに有利なほうへ変えることはできません。

会社員が注意すること

  • 給与以外の所得が年20万円以下なら、所得税の確定申告は不要という仕組みがあります(第3部20章と同じ話)。 ただし住民税の申告は別途必要です
  • 他に確定申告をするなら、20万円以下でも含める必要があります
  • 損失は切り捨てになります。株式のように繰り越せないので、 「今年は損だから来年の利益と相殺しよう」ができません

納税資金の問題

暗号資産で特に起きやすい事故があります。

利益が出た年と、価格が下がった年がずれる年内に大きな利益が出て、その利益を暗号資産のまま持ち続けたとします。
年が明けて価格が大きく下がったあとに、前年の利益に対する納税義務がやってきます。 資産は減っているのに、税額は前年の利益で計算されたままです。
利益が出た時点で、納税分を円で確保しておくのが対策です。

これから変わること(まだ変わっていない)

暗号資産の税は、大きく変わることが決まっています。 ただしいつからかがまだ確定していないので、 「もう20%になった」という説明を見かけたら、適用の開始時期を確かめてください。

いま(この章の内容)改正後
課税のしかた雑所得・総合課税申告分離課税
税率累進。住民税と合わせ最大約55%20%(所得税15%・個人住民税5%)
損失の繰越できない翌年以後3年
対象すべての暗号資産特定暗号資産(登録された業者が扱うものに限る)

適用が始まるのは、金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日からです。改正法は2026年7月15日に成立しましたが、施行日は政令で定められます。つまり、いまはまだこの章の本文どおりの扱いです。最新の数字と適用時期は、国税庁と財務省の公表資料(末尾の参考文献)で確かめてください。

「登録された業者を通したものに限る」という条件が付きます。海外の無登録業者での取引は分離課税の対象外になる見込みです。 また、いま抱えている含み損や、制度が変わる前に確定させた損を 新しい制度へ持ち越せるとはかぎりません。

まとめ

  • 暗号資産は雑所得・総合課税。株式の20.315%とはまったく別
  • 他の所得と合算した累進税率で、住民税と合わせ最大約55%
  • 株式・給与とは損益通算できず、繰越控除もできない。NISAも使えない
  • 円に戻していなくても、暗号資産どうしの交換や決済で課税される
  • 取引のたびに記録を残す。あとから再現するのは非常に難しい
  • 利益が出た年に、納税分を円で確保しておく
  • 20%の申告分離課税と3年の繰越控除への改正が決まっているが、適用はまだ始まっていない

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁No.1524 暗号資産を売却または使用した場合の課税関係国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
  2. 官公庁暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について国税庁確認日 2026-09-08
  3. 官公庁令和8年度税制改正の大綱財務省確認日 2026-09-08
  4. 官公庁金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要金融庁確認日 2026-09-08
  5. 官公庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
  6. 官公庁暗号資産(仮想通貨)に関する注意喚起金融庁確認日 2026-09-07

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