第2部 資産クラス別

暗号資産の種類と特徴

何千種類もあるものを4つの型で分ける。供給の決まり方、発行主体の有無、ステーブルコインが別枠な理由。

前の章では暗号資産を1つのかたまりとして扱いました。実際には何千種類もあり、設計が違えば性質もまるで違います。 ただ、種類の数だけ性質があるわけではありません。4つの型に分けると、たいていのものはどれかに収まります。

この章は銘柄の良し悪しを書きません。どれを買うべきか・どれが有望かは扱わない方針です(末尾の免責のとおり)。 扱うのは「何がどう違うのか」という仕組みの話だけです。

まず、見分ける4つの軸

名前や時価総額の順位で見ると違いが分かりません。次の4つを聞くと、 だいたいの性質が決まります。

上から順に効きます。とくに1つめで、性質が大きく2つに割れます。

4つの型

1. 送金・価値の保存を目的にしたもの

代表はビットコインです。設計の中心は「誰も勝手に増やせない」という一点にあります。 発行の上限が2,100万枚とプログラムで決められており、 新規に発行される量はおよそ4年ごとに半分になります(半減期)。 取引を確定させるのは大量の計算(PoW)で、これに電力を使います。

発行主体がいないことは、裏返すと責任を負う相手がいないということでもあります。 送金先を間違えても、鍵をなくしても、取り消してくれる窓口はありません。

2. プログラムを載せる基盤になるもの

代表はイーサリアムです。送金だけでなくその上でプログラム(スマートコントラクト)を動かす土台として作られています。 使うたびに手数料がかかり、その手数料は混み具合で上下します。 取引を確定させる方法は、預け入れた量にもとづくもの(PoS)に移行しました。

発行量にあらかじめ決められた上限はありません。 1つめの型が「量を固定する」ことを設計の芯にしているのに対し、 こちらは使われることを芯にしている、という違いです。

3. 法定通貨に価値を固定したもの(ステーブルコイン)

円やドルと1対1になるよう設計されたものです。値動きを抑えるのが目的なので、値上がりを狙う対象ではありません。決済や、取引の待機場所として使われます。

重要なのは、安定するかどうかは裏付け資産の中身で決まることです。 同じ「1ドル」を名乗っていても、 現金と短期国債で裏付けているものと、別の暗号資産を担保にしたものと、 裏付けを持たず需給の調整だけで価格を保とうとするもの(アルゴリズム型)では、 まったく別物です。アルゴリズム型は過去に価格の固定が崩れ、短期間で価値をほぼ失った例があります。

日本では、これらは暗号資産と別枠で扱われます。法定通貨に価値を固定して送金・決済に使えるものは「電子決済手段」として資金決済法で規制され、 発行できるのは銀行・資金移動業者・信託会社に限られます。 「ステーブルコイン」と呼ばれるものすべてがこの枠に入るわけではありません。 国内の登録業者を通すかどうかで、適用される規制が変わります。

4. 発行主体の都合に強く左右されるもの

特定の事業者やプロジェクトが発行し、その事業者の方針で扱いが変わるものです。 性質としては1つめの型の対極にあります。 発行量を後から変えられることがあり、 少数の保有者が大量に持っていると、その人たちの売買で価格が大きく動きます。

「増えないこと」を売りにする設計と、「使われること」を優先する設計は、目的が違うだけで優劣ではありません。

「時価総額」の読み方に注意する

順位づけによく使われる時価総額は、流通している量 × 直近に付いた価格で計算した数字です。 その金額が実際に投じられているという意味ではありません。

直近の価格は、そのとき取引されたごく一部に付いた値段です。 流通量の全部を売れば、その価格では到底さばけません。 板が薄いほど、この差は大きくなります(第4部25章)。

「時価総額◯位」は規模の目安にはなりますが、換金できる金額ではありません。

型が違えば、かかる規制も違う

日本の制度は「暗号資産」をひとまとめには扱っていません。同じ見た目でも、根拠になる法律が違うことがあります。

暗号資産電子決済手段(法定通貨に固定)
主な根拠法資金決済法(改正法の施行後は金融商品取引法)資金決済法
発行できる者限定されない銀行・資金移動業者・信託会社
価格需給で動く法定通貨に固定する設計(崩れることはある)

制度は動いている最中です。暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法が 2026年7月15日に成立しました。施行日は政令で定められるため、この表の左の列はいずれ変わります。 取引する時点の扱いは、金融庁の公表資料で最新の数字を確かめてください。

型が変わっても変わらないこと

  • どの型も、それ自体は何も生みません。利益・利息・賃料にあたるものが無い点は共通です(前章)
  • 投資者保護基金はどの型にもありません。取引所が破綻したときに補償する仕組みは、株式と違って用意されていません
  • 税の扱いは型で変わりません。いまは雑所得・総合課税で、暗号資産どうしの交換でも課税されます(第3部22章)
  • 種類が多いこと自体がリスクになります。取引量の少ないものは、売りたいときに買い手がいないことがあります

まとめ

  • 発行主体の有無・供給の決まり方・合意のしかた・目的、の4つで型が分かれる
  • 送金型は「増やせないこと」、基盤型は「使われること」を設計の芯にしている
  • 法定通貨に固定したものは、安定するかどうかが裏付け資産の中身で決まる。日本では電子決済手段として別枠で、発行できる者が限られる
  • 時価総額は流通量と直近価格の掛け算で、その金額で売り抜けられる意味ではない
  • 型が違っても、何も生まないこと・保護基金が無いこと・税の重さは共通

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁暗号資産(仮想通貨)に関する注意喚起金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁電子決済手段等取引業・電子決済等取扱業を行うみなさまへ金融庁確認日 2026-09-08
  3. 官公庁金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要金融庁確認日 2026-09-08
  4. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07

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