第2部 資産クラス別

暗号資産

ビットコインなどの位置づけ、価格の源泉、取引所の破綻リスク、そして日本での税の重さ。

暗号資産は、この教科書で扱う資産のなかで制度上の位置づけが最も違います。 「株式と同じように投資できるもの」と考えると、 税金でも保護の仕組みでも想定と食い違います。 ここでは値上がりの見通しではなく、性質と制度を扱います。種類ごとの違いは次の章で扱います。

法律上は「金融商品」ではない

株式・投資信託暗号資産
根拠法金融商品取引法資金決済法(一部は金商法)。改正法の施行後は金融商品取引法へ移る
分別管理信託銀行が分別保管交換業者に分別管理義務あり
投資者保護基金あり(証券会社の破綻時、1,000万円まで補償)ない
預金保険ない

この位置づけは変わる途中です。暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法が、 2026年7月15日に成立しました。施行後は有価証券とは別の「金融商品」として金商法に位置づけられ、 交換業者の名称も暗号資産取引業者に変わり、 インサイダー取引の規制も新しく設けられます。施行日は政令で定められるため、この章の表は改正で変わります。取引する時点の扱いは、金融庁の公表資料で最新の数字を確かめてください。

暗号資産は「通貨」ではありません。法定通貨(円・ドル)ではなく、 価値を裏付けるものも発行主体の保証もありません。 金融庁は暗号資産について繰り返し注意喚起を出しています(末尾の参考文献)。

価格の源泉

第1部1章で見た「リターンの源泉」を当てはめると、位置がはっきりします。

金(第2部12章)と同じ列に入ります。ただし金には数千年の実物需要の歴史があり、その点も違います。

これは「価値がない」という意味ではありません。送金や決済の仕組みとしての有用性を評価する立場はあります。 ここで言えるのは、株式のように 「利益の何倍か」で高い安いを判断する物差しがないということです。

固有のリスク

  • 価格変動が大きい。1日で数十%動くことがあります
  • 取引所の破綻・ハッキング。過去に国内外で流出事件が複数起きています。 投資者保護基金がないため、戻ってこないことがあります
  • 秘密鍵の紛失。自分で保管する場合、 鍵を失うと誰にも復元できません。銀行のような再発行の仕組みがありません
  • 詐欺の温床になりやすい。「必ず儲かる」「元本保証」をうたう勧誘が多く、 無登録業者による被害が続いています(第4部34章)
  • 制度が変わりうる。各国の規制方針が定まっておらず、 規制の変更が価格に直接効きます

税金が株式とまったく違う

ここが実務的にいちばん効きます。詳しくは第3部22章で扱いますが、要点だけ。

株式暗号資産(個人・原則)
所得区分譲渡所得(申告分離)雑所得(総合課税)
税率20.315%で固定他の所得と合算して累進。住民税と合わせ最大約55%
損益通算株式等の中で可能給与や株式とは通算できない
繰越控除3年間できるできない
NISA使える使えない

この税の扱いも、改正が決まっています。20%の申告分離課税と3年の繰越控除を導入する方針が令和8年度税制改正の大綱に 盛り込まれました。ただし適用が始まるのは金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日からで、いまはまだ上の表のとおりです(第3部22章)。

売っていなくても課税されることがあります。暗号資産どうしの交換や、暗号資産で物を買った場合も、 その時点で損益が実現したものとして扱われます。 「円に戻していないから関係ない」は誤りです。 取引のたびに記録が要るので、後から計算するのが非常に大変になります

持つと決めるなら

買うべきかどうかはこの教科書では書きません(免責のとおりです)。 判断する場合に、事実として押さえておくべき点だけ挙げます。

  • 金融庁に登録された暗号資産交換業者かを確認する。 無登録業者の一覧は金融庁が公表しています
  • 全額失っても生活が変わらない額に収める。第1部2章のリスク許容度の話が、他のどの資産よりも強く当てはまります
  • 取引の記録を都度残す。税の計算に必要になります
  • レバレッジ取引は別物として扱う。国内では個人は最大2倍に制限されていますが、 損失が入金額を超える仕組みは変わりません

まとめ

  • 暗号資産は金融商品取引法ではなく資金決済法が主な根拠。投資者保護基金がない
  • 何も生まないので、値段は需給だけで決まる
  • 取引所の破綻・鍵の紛失・詐欺という、他の資産にないリスクがある
  • 税は雑所得・総合課税で最大約55%。損益通算も繰越もできず、NISAも使えない
  • 暗号資産どうしの交換でも課税される。記録は都度残す

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁暗号資産(仮想通貨)に関する注意喚起金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要金融庁確認日 2026-09-08
  3. 官公庁No.1524 暗号資産を売却または使用した場合の課税関係国税庁 タックスアンサー確認日 2026-09-07
  4. 官公庁無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について金融庁確認日 2026-09-07
  5. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07

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