第4部 実践

注文の出し方

成行・指値・逆指値の違いと使い分け。呼値の単位、板の見方、注文が約定する順番まで。

ここからは実際の手の話です。注文の種類を間違えると、 思っていたのとまったく違う値段で約定します。 しかもそれは操作ミスではなく、注文の仕様どおりの動作なので、 仕組みを知らないと同じことを繰り返します。

成行と指値

成行(なりゆき)指値(さしね)
指定するもの数量だけ数量と値段
約定しやすさほぼ確実に約定するその値段に届かなければ約定しない
値段いくらになるか分からない指定した値段かそれより有利な値段
向いている場面数量を確実に持ちたい・手放したいとき値段を守りたいとき

成行注文は「いくらでもいいから買う」という意味です。板が薄い銘柄で成行を出すと、想定よりずっと高い値段まで買い上がることがあります。

緑で囲った3段すべてを食って、はじめて800株が埋まります。板のいちばん上に見えていた1,000円で買えるのは最初の100株だけです。
成行が滑る例上の板で800株の成行買いを出すと、約定は 1,000円×100株 + 1,050円×200株 + 1,200円×500株。支払いは合計910,000円で、平均取得単価は1,137.5です。板に見えていた1,000円では買えません。 これは異常ではなく、成行の定義どおりの動作です。

成行が危ないのは、値幅制限いっぱいまで動きうるからです。ストップ高・ストップ安に張り付いているときや、 取引時間外に大きなニュースが出た翌朝の寄り付きでは、 前日終値からかけ離れた値段で約定することがあります。 こうした場面では指値を使うのが基本です。

約定する順番(板寄せとザラバ)

注文が処理される順番には、はっきりした優先順位があります。

  1. 成行優先——成行注文は指値注文より先に処理される
  2. 価格優先——買いは高い値段の注文が先、売りは安い値段の注文が先
  3. 時間優先——同じ値段なら、先に出した注文が先
この3段は上から順に効きます。値段が同じところまで来て、はじめて「先に出したかどうか」が効きます。

だから「同じ1,000円の買い指値」でも、先に並んでいた人から順に約定します。 1円だけ高い1,001円で出せば、価格優先で列の前に出られます。 この1円が呼値の単位で、価格帯ごとに決まっています (株価3,000円以下なら1円、といった形で高くなるほど粗くなる)。呼値の単位に合わない値段では注文を出せません。

逆指値——「不利な方向に動いたら」の注文

指値が「有利な値段になったら約定させる」注文なのに対して、逆指値「不利な値段になったら発動させる」注文です。 最初は逆に見えますが、損切りのための道具だと考えると筋が通ります。

損切りに使う1,000円で買った株が下がったときの損を、1割で止めたいとします。 「900円以下になったら成行で売る」という逆指値を置いておけば、 画面を見ていなくても発動します。
ただし900円で売れる保証はありません。 900円に達したら発動するだけで、そこから成行で売るので、 急落中なら880円や850円になることもあります。

逆指値の発動後の注文を「成行」にするか「指値」にするかは選べます。 指値にすれば値段は守れますが、約定しないまま下がり続ける危険があります。 損切りは「確実に切ること」が目的なので、成行を選ぶことが多い。 ここは目的から選ぶところです。

IFD・OCO・IFDOCO

複数の注文を組み合わせて、あらかじめ出しておく形です。

名前意味使う場面
IFD1つ目が約定したら、2つ目の注文が自動で出る買えたら同時に売り注文を置いておきたい
OCO2つ出しておき、片方が約定したらもう片方が取り消される利益確定と損切りを両方置いておきたい
IFDOCOIFDとOCOの組み合わせ買い・利確・損切りを1度に仕込みたい

OCOがとくに実用的です。「1,100円になったら売る(利確)」と 「900円になったら売る(損切り)」を同時に置いておくと、 どちらかが起きた時点でもう片方が消えます。 これを手動でやると、片方が約定したあともう片方を取り消し忘れて、 持っていない株を売る注文が残る事故が起きます。

注文の有効期限

  • 当日中——その日の取引が終わると失効する。既定はたいていこれ
  • 期間指定・無期限——数日〜数週間、板に残し続ける
  • 寄付(よりつき)・引け——寄り付きだけ、引けだけで執行する条件

期限の長い注文を出しっぱなしにすると、忘れたころに約定します。 相場も自分の考えも変わっているのに、過去の自分が出した注文が実行される。 期限は短めにして、意識的に出し直すほうが安全です。

この章のまとめ

  • 成行は数量の確実さと引き換えに、値段を捨てる注文
  • 指値は値段を守るが、約定しないことがある
  • 優先順位は「成行 → 価格 → 時間」。同値なら先に出したほうが先
  • 呼値の単位に合わない値段では注文できない
  • 逆指値は損切りの道具。発動はするが、その値段で約定する保証はない
  • OCOで利確と損切りを同時に置いておくと、取り消し忘れの事故が防げる
  • 有効期限は短めに。古い注文は過去の判断のまま実行される

この章に出てきた「板」の読み方そのものは、カリキュラム上の次章 「板・歩み値の読み方」で扱います。まだ書いていないので、目次では準備中です。

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  2. 業界団体・取引所東証マーケット情報・株式売買制度株式会社日本取引所グループ(JPX)確認日 2026-09-07
  3. 業界団体・取引所呼値の単位株式会社日本取引所グループ(JPX)確認日 2026-09-07
  4. 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07

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