第4部 実践

積立とドルコスト平均法

ドルコスト平均法が効く場面と、効かない場面。一括投資との比較。

毎月一定額を買い続ける方法をドルコスト平均法といいます。 広く勧められる方法ですが、効く理由と、効かない場面を 分けて理解しておかないと、期待の置き方を間違えます。

なぜ平均取得単価が下がるのか

金額を固定すると、安いときに多く、高いときに少なく買うことになります。これは意思ではなく算数として自動的にそうなります。

価格投じた額買えた口数
1回目1,00010,00010
2回目80010,00012.5
3回目1,25010,0008
4回目1,00010,00010
同じ価格の並びでも、金額を固定すると単純平均より安く買えます。ただし「必ず得をする」という意味ではありません(後述)。

これは数学的に必ず成り立ちます。金額を固定した場合の平均取得単価は調和平均になり、価格が変動する限り、必ず単純平均より低くなります(すべて同じ価格のときだけ一致)。 ここまでは疑いようがありません。

ただし「単純平均に勝つ」は比較として不適切

よくある誤解がここです。比べるべき相手は「価格の単純平均」ではありません。現実の選択肢は次の2つです。

  • いま手元にある資金を一括で投じる
  • 手元にある資金を分割して投じる(現金のまま待つ期間ができる)

この比較では、ドルコスト平均法が不利になることのほうが多くなります。 理由は単純で、まだ投じていないお金は運用に回っていないからです。 市場が長期的に上昇するなら、早く入れたほうが有利になります。

2つの状況を分けて考える毎月の収入から積み立てる場合—— そもそも一括投資という選択肢がありません。 手元にないお金は投じられないので、この比較は成立しません。この場合、ドルコスト平均法は唯一の方法であって、劣った方法ではありません。
まとまった資金がすでにある場合—— ここではじめて一括か分割かの選択が生じます。 期待値では一括が有利になりやすい一方、直後に大きく下げたときの後悔は分割のほうが小さい。 これは損得ではなく、続けられるかどうかの問題です。

時間分散が効く場面と効かない場面

価格の動きドルコスト平均法は
下がってから戻る有利。安いところで多く買える
上がり続ける不利。一括で買ったほうが良かったことになる
上がってから下がる不利。高いところで買い続けたことになる
下がり続ける損は小さくなるが、それでも損

どれになるかは事前に分かりません。分かるなら分散する必要がありません。 ドルコスト平均法の価値は「有利になる」ことではなく、どれになるか分からない状況で、判断を挟まずに続けられることです。

積立の本当の効き目——続けられること

第1部2章で「下落に耐えられるかは、下落してみるまで分からない」と書きました。 積立の最大の利点は数字ではなく、行動の側にあります。

  • 買うタイミングを毎回考えなくてよい。考える回数が減れば、間違える回数も減ります
  • 下げ相場で買い続けられる。自動化していないと、下がっているときに買うのは心理的に難しい
  • 手元の資金を一度に失う恐怖がない。結果として、市場に居続けられます

実務の設定

  • 証券会社の自動積立を使う。手で毎月買うと必ず途切れます
  • NISAのつみたて投資枠は積立でしか買えません(第3部18章)
  • ボーナス設定——年に数回、増額できる仕組みがあります。 年間枠を使い切りたい場合に使えます
  • 金額は下げてもよいので止めない。止めると再開の判断が必要になり、たいてい再開しません

まとめ

  • 金額を固定すると、安いときに多く買えるので取得単価は単純平均より必ず下がる
  • ただし比べる相手は単純平均ではなく「一括投資」。期待値では一括が有利になりやすい
  • 毎月の収入から積み立てる場合、そもそも一括という選択肢がない
  • 有利になるかは値動き次第で、事前には分からない
  • 本当の効き目は、判断を挟まずに続けられること
  • 自動積立にする。金額は下げてよいが止めない

参考文献

この章の記述は以下にもとづいています。制度は変わるので、 数字を実際に使う前に一次資料そのものを確かめてください。

  1. 官公庁投資の基本金融庁確認日 2026-09-07
  2. 官公庁基礎から学べる金融ガイド金融庁確認日 2026-09-07
  3. 業界団体・取引所投資の時間(投資教育コンテンツ)日本証券業協会確認日 2026-09-07

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